日本と2020年オリンピック

The Economist の記事を訳出しました。
Japan and the 2020 Olympics: Party like it’s ’64
原文はこちらから読めます。

記事のタイトルは ‘Party like it’s ’64’。
これは、プリンスのヒット曲 ‘1999’ の歌詞 ‘So tonight I’m gonna party like it’s 1999’ のもじり。
世界が滅びると言われていた1999年にいるかのように、俺は明日のことなんか考えないでパーティーを楽しむぜ、という意味。
お先真っ暗な経済状況の下、後先のことを考えずに、オリンピックで盛り上がろうとしている日本を暗に揶揄した秀逸なタイトルです。


日本と2020年オリンピック
1964年の頃のようにパーティーしよう

東京が思いもかけない魔力を見せる

2013年9月14日

 2016年のオリンピック招致が盛り上がらなかったのは当然だった。長期にわたる経済不安と財政赤字の拡大を経て、世界最大都市、東京の住民は、世界で最も金のかかるスポーツの見せ物に乗り気になれなかった。今回は、そのような問題はなかった。保守的な管理者会では、涙とハグは伝染しやすい。

 2020年のオリンピック主催権利獲得のためにマドリッドとイスタンブールを打ち負かしていく過程で、東京都は、招致が都民の70%に支持されていることと、2011年3月に東北の沿岸地域を襲い、福島第一原発での原子力危機を引き起こした地震と津波以来、地域のサポートが大きく増加したことを、国際オリンピック委員会(IOC)に印象づけた。

 東京のパッションに再び火を灯すのに災害を必要としたことは、奇妙なことに思えるかもしれない。しかし、東京都政は執拗にオリンピックが日本の復興の助けになるという考えを売り込んだ。終盤では、東京から230キロメートル離れた福島で変わらず続く一連の問題が、東京のオリンピック主催者たちを守勢に追い込み、最終的に、内閣総理大臣、安倍晋三が、放射能漏れは防ぐから選手たちは安全であるとIOCを安心させるために、470億円をかき集めることになった。

 東京都は、1964年のオリンピックの中心施設だった国際オリンピックスタジアムを改修する一方、計画される37施設のうち、22の施設をゼロから建設しようとしている。日本政府はこれらすべてに4090億円かかり、それを3兆円のオリンピック需要で相殺できると見積もっている。しかし、巨大地震が2020年までに東京を襲うかも知れないことを考慮に入れなかったとしても(専門家たちはその可能性は高いと予測している)、その試算は荒っぽいほど楽観的に見える。

 建設会社や不動産会社は、まだ気にしなくていい。1964年のオリンピックが、東京・大阪間の新幹線や首都圏の高速道路を含む、重要なインフラ整備の引き金となったのはよく知られるところだ。それより不吉なのは、累積していく財政赤字を補うために国債を発行しなくてはならない状況に日本が陥っていることだ。日本政府の負債の総額は、いまやGDPの200%を上回っているのだ。

 これからの7年間に、コストの問題が大きく浮上してくるだろう。いまのうちは、総理大臣は、光輝く日本の首都を再び世界の表舞台に乗せたと胸を張って言うことができる。そして、東京という選択は、彼の成長戦略にとってカンフル剤として必要なのだろう。しかし、7年間に7回総理大臣が変わる国で、オリンピックにかかる費用が困難に直面している日本経済の最後の頼みの綱であったと判明する2020年に、非難を受けるべき安倍氏が総理大臣であることはありそうにもない。

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