ハリウッドとインターネット

今週号の The Economist から、記事をひとつ訳出してみました。

音楽ソフトや映画ソフトのオンライン・ダウンロードの価格が下がれば、CDとDVDは姿を消し、レンタル店も消滅するでしょう。
その日はそう遠くないかも知れません。

原文はこちらから読めます。


ハリウッドとインターネット
近日公開

映画産業が他の産業の過ちから学ぼうとしている

 ハリウッドはインターネットに遅れてやってきた。莫大なファイル・サイズにより違法デジタル・コピーから長年守られてきたため、ハリウッドは、音楽業界のようには、オンラインの販売モデルを発展させることを強いられなかった。また、ハリウッドは、新聞メディアのインターネット上での苦戦を見てきて、同じことを試したいとは思わなかった。しかし、今週、ハリウッドはついに一歩を踏み出し、オンライン上で映画とテレビ番組を売るため、二つのシステムに探りを入れた。その新規構想は、他のメディアの過ちから学んだ教訓を生かして、良く考え抜かれている。しかし一方、それはあまりに遅かったともいえるだろう。

 アダムズ・メディア・リサーチによると、アメリカでは昨年、映画の合法ダウンロードは2.5億ドル(250億円)に上った。しかし、多くの国々では、まだ正統なマーケットは存在していない。この事実を気にかける者はいなかったが、しかし、過去10年でハリウッドの富を復興させた銀色の円盤、DVDの売り上げが伸び悩んでいることになると、話は別だ。DVDの売り上げは、2004年には120億ドル(1兆2000億円)だったのが、2009年には87億ドル(8700億円)にまで落ち込んだ(グラフを参照)。どうやら消費者は、ハリウッドにとってはDVDほど利益にならない、レンタルを見直し始めたようだ。郵便配達を使ったレンタルがあるし、レッドボックス社が所有するレンタル店も急増している。

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 そこで、オンライン販売に熱心になるというわけだ。大手映画会社六つのうち五つを含むテクノロジー企業と販売店の共同体、デジタル・エンターテインメント・コンテント・エコシステム(DECE)は、今週、デジタル映画のフォーマットに合意し、購入状況を把握するための組織を指名した。消費者は、一度、映画を買ったら、様々な機械で再生できるようになる。映画のデータが遠隔サーバ上に蓄積されることによって、消費者は、映画のデータを機械から機械へ移行する必要がなくなるのだ。

 DECEには距離を置くディズニーは、キーチェストという同様の手法に手を付けている。このDECEの初期構想は、アップルが音楽で成し遂げ、いまアマゾンが電子ブックを脅かしているのと同じことを、ひとつの企業が映画に対してするのを阻止することを狙っている。アップルやアマゾンといった企業は、マーケットで大きなリードを取ることによって、さらにはコンテンツを自社の機械であるiPodやKindleに結びつけることによって、メディア企業に条件を出せるようになった。DECEの代表兼ソニー社員であるミッチ・シンガーは、そういった閉じたシステムではなく、自由競争と技術刷新を促進する開かれたフォーマットであるCDやDVDにより近いものを生み出したいと考えている。

 その新しい戦略におけるひとつの問題は、アップルが絡んでいないということだ。アップルはすでに、映画やテレビのダウンロードを、iTunesストアを通じて提供している。そして、もう一つ困難となるだろうことは、手に触れることのできない「クラウド上」のものにお金を払うように、消費者を納得させることだ。オンライン上の映画の値段を低く設定し過ぎると、映画会社はDVDが脅威にさらされることに対して反乱を起こすだろうし、あまりに高く設定しすぎると、人々は、レンタルか、もしくは映画の違法ダウンロードを続けることになるだろう。

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