オンライン上のプライバシー
The Economist の記事を訳出しました。
Online privacy: How to disappear
原文はこちらから読めます。
オンライン上のプライバシー
どのように姿をくらますか
それは難しい。そして、さらに難しくなっていく。
2013年6月15日
アメリカのスパイ活動の詳細が公になるにつれて、ジョージ・オーウェルの常に監視する国家についての寓話『1984』の売り上げが急速に伸びている。そして同様に、戦略技術共同体(タクティカル・テクノロジー・コレクティブ)によって運営されているWebサイトへのトラフィックも急速に伸びている。共同設立者のステファニー・ハンキー氏も、「人々に自分たちが監視されることについて納得してもらうのは容易ではないだろう」と認めている。もはや容易でないことは明白だ。
監視反対論者たちは、いつも、疑いを招くようなコミュニケーションを人目から隠しておくために手間のかかる手段をとってきた。しかし、今やコンピュータは、ありふれた活動の中にさえ、疑わしいパターンを検知する。それは、もっとも献身的な秘密活動家たちに、さらなる警戒を要求する。そして彼らは、三つの試練に直面することになる。
ひとつ目は、情報の伝達過程における、第三者からの詮索の阻止である。暗号化されていないEメールは、絵はがきと同じくらい無防備であると、ヨーロッパ大学協会(ヨーロピアン・ユニバーシティ・インスティテュート)のインターネット専門家のベン・ワグナー氏は警告する。いくつかのWebクライアントで機能する暗号化ソフトウェア、Pretty Good Privacy(PGP)は、このような盗み読みを防ぐことができる。
もう一つの課題は、どこであれスパイが忍び込んでいるところからデータが盗み出されるのを防ぐことである。それは、政府に情報を流しているとみて間違いない、ソーシャル・ネットワークや検索エンジンのようなサービスを使わないことを意味する。あるいは、未踏の領域にそれらにとって代わる手段を見つけ出すしかない。フリーウェアがたくさんインストールされたデスクトップ・コンピュータこそが、安全なEメールサーバを構築するものだ。だから真の秘密活動家は、通信機器から、一企業が独占的に開発したオペレーティング・システムを除外する。(オペレーティング・システムのほんの一部が危険にさらされることで、あなたのすべてのファイルがアクセスされてしまわないように。)
コミュニケーションがあったかどうかを記録するシステムを回避するのは、さらに困難を極める。「モバイルを使用するのは、あなたが為しうる最悪の行為だ」と、戦略技術共同体のマレク・ツチンスキー氏は言う。電話会社が残している通話ログに記録が残らないようにするのは困難だ。それに比べれば、インターネット利用者は、より安全である。Torのようなフリーウェアは、巧妙な経路でリクエストを送信することで、その身元を隠すことができる。
しかし、レーダーの網にかからないでいるのは、うんざりするほど労力を強いられるものであり、それを維持するのは難しい。無配慮な他人とのコンタクトは、覆いを吹き飛ばす可能性がある。技術オタクでさえ、より単純なやり方で、自らを危険にさらしうる。とても基本的なプライベートモードを提供しているグーグルのブラウザ’Chrome’は、ユーザに対して皮肉っぽく「あなたの後ろに誰か立っていないか」気をつけるように警告する。
ハンキー氏は、人々のプライバシーを守るために、テクノロジーだけでなく、法律を好むかもしれない。彼女は、ヨーロッパやそれ以外の国の政府に、アメリカの「デジタルによる独占」にとって代わる手段を後押ししてもらいたいと望んでいる。一方、ワグナー氏は用心深くあることを推奨する。曰く、「おそらくある種のものは、そもそもはじめからオンラインにあってはならないのだ。」