Apocalypse then: The lessons of violence and inequality through the ages

Apocalypse then
The lessons of violence and inequality through the ages
from The Economist

In “The Great Leveler”, the author oddly welcomes the Great Depression because: 1) real wages risen; 2) the incomes of the affluent fallen

The author puts the discussion of increased inequality in works of Piketty, Atkinson & Milanovicinto a broad historical context

He finds that inequality is almost always high or rising as political and economic power buttress each other and both pass down generations

Large-scale levellings: 1) epidemics; 2) the collapse of states and economic systems; 3) total revolution; 4) the war of mass-mobilisation

Violence is sometimes effective but does not lead to greater equality. Most popular unrest in history failed to equalise

Mass-mobilisation warfare was the cause of the unprecedented decrease in inequality. The deployment of national resources soaked the rich

Low inequality factors: 1) income tax (94% 1944 US); 2) property tax (77% 1941); 3) physical damage; 4) post-war inflations; 5) trade unions

Following Max Weber, he thinks democracy is a price elites pay for mass warfare & finds it has no effect on inequality like classical Athens

Catastrophic levellings like Epidemics, revolutions & wars will be less likely in future. General prosperity risen. Global inequality fallen

Attempts to ease inequality democratically through redistribution & the empowerment of labour can hardly change the trend & may prove futile

Other possibilities: 1) good, unknown transformation may come in the future, or AI may acquire its own will & change the trend

2) civilisational collapse might be worth paying for the Utopia. Wealth may concentrate itself over time; the ability to destroy does not

情報の非対称性/情報を隠すエージェント

The Economist の記事を訳出しました。
Information asymmetry: Secrets and agents
原文はこちらから読めます。


情報の非対称性
情報を隠すエージェント
ジョージ・アカロフの1970年の論文、「レモン市場」は、情報経済学の基礎である。主要な経済概念についてのシリーズ第1回。

2016年6月23日

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 2007年、ワシントン州は、労働市場をより公平なものにすることを目的とした新しいルールを導入した。すなわち、企業は、求職者のクレジット履歴(個人信用情報)をチェックすることが禁じられたのだ。運動家たちは、平等への一歩として、この新しい法律を歓迎した。というのも、クレジット履歴の評価が低い応募者は、貧乏人や、黒人、若者であることが多いからだ。それ以来、10の他の州が後に続いた。しかし、2人のエコノミスト、ロバート・クリフォードとダニエル・ショーグが、最近、その禁止令について研究し、その法律が黒人と若者の就業率を増加させるどころか、むしろ減少させていたことを発見した。

 1970年以前は、経済学者たちは、経済学の分野において、この問題について考える手がかりをあまり見つけられなかった。実際のところ、彼らは、情報の役割について、まったく真剣に考えていなかった。例えば、労働市場において、教科書は大抵、雇用主は労働者、もしくは潜在的な労働者の生産性を把握しており、競争原理のおかげで、成果にきちんと見合った対価を支払っていることを前提としている。

 その推論をひっくり返す研究は、重大な発見として、すぐに賞賛を浴びるだろうと、あなたは思うかも知れない。しかし、1960年代後半にジョージ・アカロフが「レモン市場」を書いた時、後にその著者にノーベル賞をもたらすことになるその論文は、3つの主要な学術誌から掲載を拒否された。当時、アカロフ氏は、カリフォルニア大学バークレー校の助教授であり、1966年に、MITで、博士課程を修了したばかりだった。おそらく、その結果として、『アメリカン・エコノミック・レビュー』誌は、彼の論文の洞察を取るに足らないものと考えた。『レビュー・オブ・エコノミック・スタディーズ』誌も同様だった。『ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー』誌は、ほとんど正反対の見解を持っており、その論文がほのめかしていることに我慢がならなかった。今はバークレー校の名誉教授であり、連邦準備制度の議長、ジャネット・イエレンと結婚したアカロフ氏は、編集者の苦言を述懐する。「ここに書かれていることが正しければ、経済学はいまと違うものになっていたはずですよ。」

 ある意味では、編集者はまったくもって正しかった。最終的に1970年に『クオータリー・ジャーナル・オブ・エコノミクス』誌に掲載されたアカロフ氏の考えは、シンプルであると同時に革新的だった。例えば、中古車市場の買い手が、良い車(「桃」)を、1,000ドルの価値があると考えていて、売り手はそれよりもやや少ない価値しかないと考えていたとする。同様に、故障した中古車(「レモン」)が、買い手にとっては500ドルの価値があり、売り手にとってはそれよりやや少ない価値しかなったとする。この場合、もしも買い手が、レモンと桃を区別することができれば、両方の取り引きが促進されるはずだ。しかし、現実には、買い手はその違いを見分けるのに苦労する。傷は補修が可能だし、エンジンの問題は判りようがないし、走行距離計でさえ改ざんできてしまう。

 車がレモンであるリスクを考慮し、買い手は売り手の提示額を値切ろうとする。買い手は、レモンか桃か半々のチャンスがあると考える車のために、例えば、750ドル支払うことも厭わないかも知れない。しかし、桃を持っていることを確信している売り手は、そのような申し出を拒否するだろう。結果として、買い手は「逆選抜」(訳注:情報の非対称性が存在する[売り手と買い手が保持している情報量に格差がある]状況[レモン市場]において発生する市場の失敗、厚生の損失。逆選択、逆淘汰とも呼ばれる。)に直面する。750ドルを受け入れようとする売り手は、自分がレモンを譲ろうとしていることを自覚している人ということになる。

 賢明な買い手は、この問題を予見することができる。彼らはずっとレモンだけを売り付けられることになるのが判っているので、たったの500ドルしか提示しない。レモンの売り手は、レモンであることがバレていた場合に行き着いたであろう価格と同じ価格に行き着く。しかし、桃はガレージにとどまる。これは悲劇だ。車の品質に確信が持てさえすれば、桃のために売り手の希望価格を喜んで支払う買い手は存在する。買い手と売り手の間のこの「情報の非対称性」が市場を殺す。

 市場の特定の人々が他の人々よりも多く情報を持っているということを観察しただけでノーベル賞を勝ち取るなんて、そんなことがあって良いものでしょうか? と、あるジャーナリストは、情報の非対称性ついての研究のために2001年のノ​​ーベル賞をアカロフ氏とジョセフ・スティグリッツと共に受賞した、マイケル・スペンスに尋ねた。彼の不信は理解できる。レモンの論文は、中古車市場の正確な説明にすらなっていない。売られたすべての中古車が不良品であるわけがないのは明らかである。そして、保険会社は、長い間、顧客こそが自分が直面するリスクの最高の目利きであり、保険を購入する人たちの中でも最も用心深い人こそがおそらく最もリスクの高い商売相手であることを認識していた。

 しかし、この概念は主流の経済学者にとっては目新しく、彼らはそれが経済モデルの多くを陳腐化したことにすぐに気づいた。研究者たちは非対称性の問題を解決できる方法を検討し、すぐにさらなる重大な発見が続いた。スペンス氏の主要な貢献は、労働市場を研究した「ジョブ・マーケット・シグナリング」と呼ばれる1973年の論文だった。雇用者はどちらの候補者が良いのかを見分けるのに苦労する。スペンス氏は、優れた労働者たちが、大学の学位のような勲章を集めることによって、自らの才能のシグナルを企業に送っているのではないかと論じた。重要なのは、これはシグナルが信頼に値する時だけ機能する、ということだ。もしも生産性の低い労働者が単位を取得するのが簡単であることに気づいてしまった場合、賢いタイプを装うことができてしまう。

 このアイデアは、従来の考えをひっくり返す。教育は、通常、労働者をより生産的にすることによって、社会に利益をもたらすと考えられている。それがもしも単に才能のシグナルに過ぎないのだとしたら、教育への投資の見返りは、社会全体にではなく、より能力の低いものの犠牲の上に、より多く稼ぐ学生たちに、あるいはひょっとすると大学に、もたらされることになる。この考えの信奉者、ジョージ・メイソン大学のブライアン・カプランは、現在、『教育に反する事例』というタイトルの本を執筆している。(スペンス氏自身は、他の人々が彼の理論を、世の中の説明として文字通りに受け取ってしまっていることを残念に思っている。)

 シグナリング(シグナルを送ること)は、ワシントンと他の州が企業に求職者のクレジット履歴の入手を禁じた時に、何が起こったかを説明するのに役立つ。クレジット履歴は、信頼できるシグナルだ。それを偽装するのは難しく、おそらく、良いクレジット履歴を持つものは、自分の借金で破産しているものに比べて、良い従業員である可能性が高い。クリフォード氏とショーグ氏は、クレジット履歴にもはやアクセスできなくなった企業が、他のシグナル、教育や経験により大きい比重を置くようになったことに気づいた。教育や経験を持つものは、不利な立場にあるグループでは稀なので、求職者が自分の価値を雇用者に納得させるのは、容易になるどころか、むしろ困難になる。

 シグナリングは、すべての行動を説明する。企業は、株主に配当金を与えるが、株主はその受け取りに対して所得税を支払わなくてはならない。企業が、自分たちの収益を維持して、株価を上げ、軽く課税されたキャピタルゲインを、このように株主たちに還元することは、企業にとって本当にメリットがあるのだろうか? シグナリングは、その謎を解く。配当金を支払うことは、力の現れであり、会社が金を貯め込む必要を感じていないことを示すことになる。同じ理由で、何故、レストランはわざわざ賃料の高い場所に出店するのだろうか? それは潜在的な顧客に、その店が、自分たちの良質な料理が成功をもたらすことを確信しているシグナルを送る。

 シグナリングが、レモン問題を克服する唯一の方法というわけではない。スティグリッツ氏とマイケル・ロスチャイルド氏、そしてもうひとりの経済学者は、1976年の論文の中で、いかに保険会社が顧客を「スクリーニング」し得るかということを示している。スクリーニングの本質は、あるタイプの顧客だけを引きつける契約を提供することにある。

 ある車の保険会社に、ハイリスクとローリスク、ふたつのタイプの顧客がいるとする。保険会社は、これらのグループを区別することができない。顧客だけが、自分が安全なドライバーかどうかを知っているのだ。ロスチャイルド氏とスティグリッツ氏は、しのぎを削る市場では、保険会社は同じ契約を両方のグループに提供して利益を出すのは不可能であることを示した。もしもそれを実行すれば、安全運転のドライバーの保険料が、危険を顧みないドライバーへの支払いに充てられることになるだろう。ライバル会社は、少し低い保険料で、少し狭い補償範囲の契約を提供できるだろうが、危険を顧みないドライバーは完全に補償されていることを望むので、安全なドライバーへの支払いが少なくなるだろう。その会社は、危険の多い被保険者とだけ取り残され、損失を出すことになるだろう。(オバマケアは、アメリカの健康保険会社に対して、すでに健康を損なっている顧客を差別することを禁じているので、一部の人たちは、これと似たような問題がオバマケアを苦しめることになるだろうと心配した。結果として生じる高い保険料が、健康的な若い顧客に加入を思いとどまらせることになれば、会社は保険料をさらに上げざるを得ず、さらに健康な顧客を遠ざけることになり、言わば、「死のスパイラル」に囚われることになるだろう。)

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 自動車の保険会社は、ふたつの契約を提供し、それぞれの契約が、対象となる顧客だけを引き寄せるようにしなくてはならない。その秘訣は、高額な完全補償の保険と、自己負担額が大きい安価なもうひとつの選択肢を提供することだ。危険を顧みないドライバーは、保険金の支払いを求める時に最終的に高額な自己負担金を支払うことになる可能性が高いことを理解しているので、尻込みするだろう。代わりに彼らは、高額な補償範囲のためにしぶしぶながら支払うことを選ぶだろう。安全運転のドライバーは、高額な自己負担金を許容し、契約した補償範囲のために低い保険料を支払うだろう。

 これはあまり幸福な問題解決とは言えない。良いドライバーは、高額な自己負担金を背負うことになる。ちょうどスペンスの教育モデルで、高い生産性を誇る労働者は、自らの価値を証明するために教育にしぶしぶながらも出資しなくてはならなかったように。しかし、スクリーニングは、企業が顧客に複数の選択肢を提供するほとんどすべての場合に機能している。

 例えば、航空会社は、貧しい顧客を遠ざけることなく、豊かな顧客から、高い価格を設定してお金を絞り取ろうとする。もしも彼らが、それぞれの顧客の懐具合を前もって知っていれば、彼らは、金持ちにだけファーストクラスのチケットを、他の人たちには手頃な価格のチケットを提供することができるだろう。しかし、彼らはすべての人々に同じ選択肢を提供しなくてはならないので、余裕のある人々をより高額なチケットに仕向けなくてはならない。これは、普通客室の座り心地をわざと悪くし、お金の無い人々だけが、その客室にやって来るようにすることを意味している。

エデンを蝕む危険

 逆選抜の他に、類似するもうひとつの問題がある。保険に入る人々がリスクを冒しがちであるというのは、保険会社にとってよく知られた事実だ。家屋の保険に入っている人は、火災報知器を確認する回数が少なくなる。健康保険は、健康に悪い飲食を促進する。1963年にケネス・アローがこの「モラルハザード」現象について記したことで、経済学者たちはそれを初めて認識した。

 モラルハザードは、インセンティブがおかしくなった時に生じる。スティグリッツ氏はノーベル賞受賞記念講演で、旧来の経済学はインセンティブを必要以上に褒め称えたが、それについて驚くほど何も言及してこなかったと述べた。この世が完全に公明正大であれば、契約で行動を正確に規定できるので、誰かにインセンティブを与えなくてはならないと考える必要はない。一方、情報が非対称で、彼らが何をしているのか観察できない時、利害が一致しているか(小売商人は安物の部品を使っていないか? 従業員はサボっていないか?)いちいち確認しなくてはならない。

 このような事態は、「プリンシパル=エージェント(使用者=被用者)」として知られる問題を提起する。使用者(例えばマネージャー)は、彼がいつも監視できるわけではない時に、被用者(例えば従業員)を、いかにして意のままにコントロールできるか? 従業員に一生懸命働かせるもっとも簡単な方法は、彼に利益の何割か、あるいはすべてをあげることである。例えば、美容師は、しばしば店の一角を借り、その収入を自分の物にする。

 しかし、一生懸命働くことが、成功を保証するとは限らない。例えば、あるコンサル会社の売れっ子アナリストがあるプロジェクトに入札して素晴らしい仕事をしたにも拘らず、結局そのプロジェクトはライバル会社に行くことだってある。そこでのもうひとつの選択肢は、「能率給」を支払うことだ。スティグリッツ氏と、もうひとりの経済学者、カール・シャピーロ氏は、企業が、従業員に自分の仕事により高い価値を感じてもらうために、ボーナスを支払っている可能性を示した。逆に、もしもサボっているのが見つかってクビになれば、その損失はより大きくなるので、ボーナスは従業員に責任逃れをさせにくくするだろう。この考察は、経済学の基本的な問題を説明するのに役立つ。労働者が、失業中で仕事を欲している時、どうして誰かが雇いたくなるまで賃金は下落しないのか? ひとつの答えは、市場の平均以上の賃金がアメとして、結果として生じる失業がムチとして機能しているからだ。

 そしてこのことは、より深遠な問題を明らかにする。アカロフ氏とその他の情報経済学の先駆者たちが登場する以前は、経済学においてしのぎを削る市場では、価格は限界費用(訳注:生産量を小さく一単位だけ増加させたとき、総費用がどれだけ増加するかを考えたときの増加分。企業が利潤最大化を達成している時には、限界費用と限界収益が一致する生産量となっている。)を反映していることを前提としていた。コスト以上の値をつければ、競争相手にチャンスを与える。しかし、情報が非対称な世界では、スティグリッツ氏によれば、「良い行動は、他の場所で得られる以上の稼ぎがあることで促進される」。つまり、従業員に解雇されたくないと思わせるために、賃金は他の仕事で得られる額より高くなくてはならない。そして、企業は、品質に投資しているのであれば、自らが作り出す製品の品質が低かった場合に、顧客を失うことをより辛く感じなくてはならない。そのため、不十分な情報しかない市場では、価格は限界費用と等価にはならないのである。

 こうして、情報の非対称性の概念が、経済学を一変させてしまった。レモンの論文が3回にわたって掲載拒否されてから50年近く経った現在、その考察は、経済学者と経済政策に大きく関与し続けている。職を見つけたいと思っていて、良いクレジット履歴を持っている、ワシントンの若い黒人の誰にでも良いから、聞いてみるといい。

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